携帯小説『金木犀』

恋愛ものの小説(フィクション・ノンフィクション)や、時事コラムなどを思いついた時に書いてます!お時間あれば時間潰しになればと思っております!

STORY⑨ 復讐、狙われた俺たち

STORY⑨ 復讐、狙われた俺たち




フラワーでのバイトも約一ヶ月程経ったか…。


康太の弁償代を6人全員で分割し、例の「焼き鳥屋」に返済する日を迎えた。


俺のアパートの一室。


康太を除く5人は既に集合していた。


「なぁ…?全部で80,000円だよなぁ?」

「康太も入れて、6人で割るとすると…。あーーっ!!細かい計算できねぇっ!!まりえ電卓!」

「はいっ!はいっ!えっーと!13,333円だね。でも割り切れないっ!!!」

「じゃぁ…一人14,000でいいでしょー!文句ないでしょっ?」
と、レミ。

「文句なーしっ!!余ったら、それで酒買えばいいんだからっ!」
と、カズサ。






ピーンポーン!



「わりぃ…。遅くなったわっ!ゼミの教授に足止めくらってよ!これから飲むんだべ?」



神妙な趣でテーブルを囲む俺たちを見た康太は、雰囲気を飲み込むのに少し時間がかかった。

「えっ…?みんなどした?俺なんかやったっけ?」



テーブルの真ん中にある封筒を康太に渡し、口火をきる俺。

「康太よ……。前から言ってたけど…これよ……俺らからの気持ちだ!これで謝ってこいよ…。これで全て一件落着だべや!康太は俺らの仲間だから!何も言わねーで受けとってくれよなっ!」


俺の言葉を皮切りに、それぞれの思いを康太に託していく。

「康太……。俺もあの喧嘩で店に迷惑かけたんだ…。今から一緒に頭下げに行くべよっ!それが終わってから飲み開始だっ!」
と少し笑みを浮かべながら健三。

「康太っ!これからは、あんなバッカみたいな輩(やから)と喧嘩しないでよね!あんなの相手する暇あるんなら、このアパートとか、フラワーであたし達と飲んでた方が楽しいでしょ?」
とレミ。

「ほんっとだよっ!皆の思いをこれからも裏切らないでよっ!みんなで伊豆旅行行くんだからっ!」
とまりえ。

「チャッチャと謝ってきてよね!私、早く飲みたいんだから!」
と、照れ臭さを隠せないカズサ。






「まぢで………。」

言葉に詰まる康太。


フローリングに膝を落とし、両手を膝につく康太。震える右手には鷲掴みにした封筒。




黙って頭をさげた康太。



絨毯(じゅうたん)にはポツポツと涙が落ちる。


「み…み………みんな、ほんとぉにありがとなぁ!!」


なかなか康太は頭をあげる事ができない。

すると健三が、座り込む康太の肩を抱き上げ、
「ほらっっ!!さっさと頭下げてくんべよっ!!頭下げるぐらい朝飯前だべよっ!!」

「でも……。」

「みんなの思い無駄にすんなって!ほらっっ!!行くぞっ!!」

「ぉ、ぉ、ぉぅ…。みんな…。ぉ、俺!行ってくるよ…。」



「ちゃーんと頭下げてくんだぞ!」

「気をつけてねっ!」


みんなからエールを貰った康太は、健三に支えられ謝罪に向かったっけ…。




康太と健三が出かけたあと、俺は車に財布を忘れたのもあって、アパートから出て駐車場に向った。


すると、普段停まっていない黒塗りのワンボックスカーが、俺の行動を注視するかの様にゆっくりと走り去った。


「なんだあの車…?」






========



次の日、二限が終わる昼前。

カフェ一階喫煙所。

健三と俺は相変わらず、講義を抜け出しタバコを吹かしていた。


「あぁー…。昨日も飲み過ぎたなぁ…。ケイタお前、まりえに怒られなかったかぁ?」
と健三。


「昨日はそうでもなかったなぁ…寝るの遅かったから、朝はきつかったけどなぁ。」

「お前のアパートは、いつもそーいう運命だかんなぁ!」

「お前!ふざけんなよって!俺のアパートが、いっつもパーティ会場だから、こーいう事になんだって!」


二人苦笑いで、缶コーヒーを握りしめる。


すると…。

「昨日はまぢでありがとなぁ…。」

「おぉっ!!康太!重役出勤だなっ!てかっ!昨日お前何回リバースした!?」
と笑い転げる健三。

「わかんねー…。途中から記憶ねーも…。けどよっ!!やっぱ!お前ら半端ねーよ!人生であんなに泣いたの、じいちゃん死んだ時ぐらいだも…まぢで感謝してるよ!」

「じいちゃんかよっ!!もぉ少し例え方あんだろーよ!てかっ!よく大学来れたなっ!今日一日グロッキーかなって思ったけど…。」
と大笑いする俺。


すると康太は突然真面目な顔つきに豹変(ひょうへん)する。

「ケイタよ…。そんな笑ってられねーかもだぞ…。この前俺らが喧嘩した奴ら、あの後から俺らを嗅ぎまわってんだとよ…。どこから情報得たんだか分からないけど、今日の朝警察から、気をつけるようにって電話きたんだわ…。午前中講義ないからゆっくり寝てようと思ったのに、無駄に早い時間から電話で起こされてよ!」


俺は耳を疑った。

「はっ!?それまぢで言ってんの!?そういえばよ……。昨日の夜駐車場にワンボックスカー止まっていたのもそれなのかぁ…?」


「まぁ〜チョッカイ出してきたらタイマンで決着つければいいべっ!」
と、拳(こぶし)を合わせて節を抜く健三。

「健三!お前はバカかっ!今回無事に事が収まったのに…まーた喧嘩したら…先は見えてんべ!しかも、あいつらただのチンピラじゃねーような気がすんだ!」
と俺。

「それは俺も同感だな!あいつらの拳(こぶし)一番受けたの俺だし!嫌な予感ばっかり頭に浮かんでよ!まぁ…俺らしばらくは身の安全に気をつけねーとだ!それと、俺らに関係する女!カズサとかレミ、まりえに気をかけてやんねーとなぁ…。」
と康太。

「んだなぁ…。あんまり、笑えねぇなぁ…。」









大学の帰り道、車内。

「今日な…康太が言ってたんだけど…。」
まりえに、昼間康太から聞いた事を全て伝えた。

「……、だからさぁ!まりえも気をつけろよぉ!」

「なんか……怖いねぇ…。私はケイタがいるから大丈夫だけど、レミとカズサ大丈夫かな?一人暮らしだし…。それに健三君、レミといくら仲良いって言っても、そんな毎時間は一緒にいないでしょ?」

「まぁなぁ〜…。なんかの勘違いで終わればいいんだけど…。」

「一応、レミとカズサにメール入れてみるよ!」

「うん。」









午後22時。








心配していた事が、徐々に現実味を帯びてくる。

「ねぇ!ケイタ!二人から返ってこないんだけど…。大丈夫かな?」

「んー…。そーだなぁ〜。時間も結構経ってるしなぁ!あっ!健三と康太に電話いれてみっかぁ?」


健三はすぐに俺からの電話に応答してくれた。

「もしもーしっ!健三!今どこにいんだぁ………。」

健三もレミに、昼間の話を細かく伝えていたようだ。

俺と健三が携帯で話していると、まりえが……。

「あっ!レミからだ!レミからメール!」


健三との電話を切ったばかりの俺。

「なんだってぇ!?」

「バイトだったから出れなかったみたいだけど…。これから健三君に迎え来てもらうみたい。でも…それにしても……カズサから返ってこないよ…。カズサは今日バイトじゃないし!昼間言ってたんだぁ!」

「まぢかぁ〜!?レミは良かったけど…。でも…カズサに関しては、もぉ少し待ってみんべよ!もしかすると、どっかで飲んでる可能性もあるしよ…。あいついつもそぉだしよっ!」


「ぅん……。でも心配だよ…。」


「あっ!康太から電話だ……。」


「もしもーし!康太!カズサと連絡取れっかぁ?」


康太の声は緊迫した声色だった。

「いやっ!それが連絡取れねーだっ!今バイクで思い当たる場所探してんだけど!」

「お前今どこいんだよ!?」


康太と電話を切ると同時に、近くのローソンで落ち合う為、咄嗟に車を走らせる。


「ねぇー!?カズサ心配だよ!余計な心配で終わればいーんだけど…。」助手席で携帯を強く握るまりえ。


ローソンに到着し、康太の姿を探すが、康太のバイクすら見当たらない。


車を走らせ、すかさず康太に電話を入れる。



4コール程で、電話に応答した康太。

「康太っ!ローソンに居ねーべ!?どこ向かっただっ?」

「ケイタ!場所移してわりぃなぁ!?今フラワーに来たんだけど!駐車場の垣根のとこで、カズサのバッグ見つけただっ!!」


「まぢかっ!!今近いところにいるから、すぐ行くわっ!2、3分だからっ!康太ぜってぇ!そこにいろよっ!!なぁっ!!」


康太との電話を切り、フラワーに直行する俺とまりえ。


「おぉっ!康太!待ってたかぁ!」

「さっきはわりぃなぁ!いきなり思いたってよっ!俺、バイクだから運転中電話するの無理だったからよぉ!」

「まぁー!しゃーねぇ!とりあえずよ!マスターだっ!」

フラワーに到着し、数秒の会話の後、フラワーのマスターに慌てて顔を出した。

「マスターっ!!」

息をあげる俺。


「あらっ!ケイタ君!いらっしゃいっ!!今日はバイトお願いしていないけど……。あっ…?待ち合わせだったの?カズサちゃんは一時間前ぐらいかなぁ…帰ったわよ!」

「えっ!?誰かと一緒っすか?」

「うーうん。今日は一人飲みだ!って、一時間ぐらい飲んで、酔い覚ましに歩いて帰るって言ってたわよ!」


俺は康太と顔を合わせる。

「まぢかっ!?」


「康太!そのバッグ貸してくれ!」

俺は、康太が抱えていたカズサのバッグを貪(むさぼ)る。

「カズサの携帯だ!!これっ!そーだよっ!!あらっ!?もう1台見当たんねぇっ!!!この携帯、セカンドの携帯だ!!!」


カズサは携帯を2台持っていたのだが、大学で主に使っている1台が見当たらない。


他に手がかりがないかと、財布や、化粧ポーチを次から次に放り出す俺。


もう一つの携帯は結局見つからなかった。

「くそっ!あいつどこに行ったんだよ…。」

しばらく考え込み、思い出したかのように、バッグ内に残っていた携帯を開く俺。


奇跡的に、開いた画面がメモ機能のままで残っていた。



















「たさかてしようすいせんた」



「おいっ!康太!これっ!これ見てみろっ!!!!」

「なんだこれっ!なんかの打ち間違えかぁ?」

「ねぇ!!貸してっ!」



まりえは俺から携帯取り上げ、

「『たさかて』って、助けてって打とうとしたんじゃない?それに、『しようすいせんた』って、『浄水センター』じゃないの!?」



「まりえっ!!頭良くねぇ!?」

関心する俺だったが、まりえの解読を聞いた康太は、すかさずバイクにまたがり浄水センターへ向った。



まりえは助手席に乗るなり警察署へ電話をいれ事細かく事情を伝える。

俺はしっかりハンドルを握りしめ現場へと急行した。



「これっ!ほんとだったら、まぢでやべぇなぁ!」

「ほんっとだよ!!!カズサ無事だよねっ!?絶対無事だよね?!でも!ケイタ!焦って事故起こしても元も子もないから慎重にねっ!でも!急いでっ!!!」

「おぉっ!分かってるよっ!絶対!カズサは大丈夫だってっ!!警察にも連絡したんだし、なんとかなるって!」


10分程で浄水センターに着いた。



康太のバイクとヘルメットが無造作に転がった薄暗い門の前。



康太のヘルメットを拾いあげ、転がったバイクを見つめながら、
「おぃっ!康太!お前なんで一人で乗り込むんだよっ!」

小さく怒りを叫ぶ俺。



俺の独り言に、まりえは涙を混じえながら敏感に反応する。

「ケイタ!!警察が来るまで待ってよーよっ!!!お願いだからっ!!」

「まりえっ!!!康太とカズサが
まぢで危ねーかもなんだって!」

「ケイタが行ったって何もならないかもじゃんっ!!どぉすんの!?ケイタも巻き添えくらったらっ!」

俺の左肩を精一杯掴みながら制御するまりえ。






遠くから、徐々に大きくなる車のマフラー音。




「あっっっ!この音……このマフラー音ってよぉ!」

「健三くん…?」
と、まりえ。


数十秒後。



「おぃっ!わりぃなぁっ!遅れて!さっきよ!康太から電話きてよっ!あいつらどこだぁ!?」

「ふざけんじゃねーよっ!お前もっと早く来いよっ!おまわりも全然来る気配ねぇしっ!サイレンも聞こえねーべやっ!!」


まりえに俺の車を運転させ、レミとまりえを現場から遠ざけさせた。


まりえとレミが去った事を確認し、健三と俺は浄水センター内に入り込む。


「っちぃっ!康太はどっちにいったんだよっ!?」
と健三。

「そんなの分かるわけねーだろっ!」



数分、健三と俺で敷地内を探し回る。





「おぃっ!ケイタっ!あの光!!」

「行ってみんべ!お前っ!まぢで静かになぁっ!」
声を押し殺し、健三に注意喚起する俺。



窓から室内を覗く二人。



「おぃっ!あれっ!右っ側!カズサじゃねーかぁー?」

「はぁっ!?どこだよっ!?」

カズサは手を縛られ、床に転がっていた。

「柱の横のっ!柱に3って書いてある柱のとこだって!!」

「俺っ!視力悪くてよっ!」

「お前は肝心なとこでだもなぁ……。どぉするよっ!?」



カズサをどう助け出そうか考えていた。


その数秒後だった。












ドスッ!!!!!!!!!!!!!





鈍い音。



一瞬の出来事だった。



後ろを見ると、健三が地面に横たわっていた。

「おいっ!健三っ!!どぉしたっ!大丈夫かぁっ!!!!」

健三に懸命に声をかける。








上をゆっくり見上げる……。

「よぉーっ!!お前久しぶりだなぁっ!俺んとこ覚えてるかぁー?」

金属バットを、自分の右肩に叩きつけながら大柄の男が立っていた。

「あっーー?誰だおめぇ!?」
俺は鬼の形相で、声を発した奴の面(つら)を確かめる。




「お前もぉ忘れたのか!?」




「………。だ、誰っ…?」

言葉に詰まった俺だったが…。

「えっ!?誰でしたっけ?笑」

その男の顔を見つめ、その様相に少し笑いもこみ上げる中、できるだけ今まで関わってきた変な男の顔を思い出す。

頭から血を流しながら健三が、

「ケイタ…。そいつ…そいつだ!!俺らに手だしたのっ!!居酒屋で手を出した奴らだっ!お前逃げろっ!!こいつら半端ねーぞっ!お前絶対殺されっからっ!!まぢで!逃げろっ!!」


「はぁっ!!?こいつがっ……?!笑。風貌(ふうぼう)変わってっからよっ!全く分かんなかったわぁ!笑。」



「まぁ〜。俺もあの時から髪の毛伸びたからなぁ!あっ!そーだ!お前さぁーっ!ケイタって言ったよな!?お前に報告だっ!さっきお前の女の…?んー………?まりこ?まり…?ま……。その女とレミだかなんだか、古臭い名前の女、拉致っといたからよっ!あとはオメェらを潰すだけなんだよなぁ!!それか…なんなら逃げてもいいんだぞ!!」



一瞬固まる俺だったが……。



ゆっくりと、重さの聞いた口調に、徐々に覇気も加えられた大声を発する俺。


「人の女の名前語るんなら、しっかり覚えとけっっ!!このバカヤロウがっ!!オメェ!どこに拉致ったんだよっ!?このドレッドヘアデブ!!それとオメェよ!!俺の女を拉致る前によ!しっかり名前ぐれぇ覚えとけっっっ!!まりえって名前なんだよっ!世界一大好きで大切な女なんだよっ!!そんな大好きな女守れねーで男やってられねーし、こんな場面で逃げられねーよ!こんなアンパンマンみたい茶番劇やってる暇なんてねーんだって!!」

「うるせぇなぁ!グダグダのろけ話ばっかりよぉっ!!!!その前に、どこに拉致るとか言うわけねぇだろーがぁっ!俺らは俺らで、大学の女を拉致って、あとからゆっくり楽しむんだわっ!」

目を引きつりながら下手くそに笑うドレッドヘアの男。


「ちっと!やりすぎじゃねーかぁっ!!俺……笑いを混ぜて会話してたつもりだけどよ…やり方が全然気に食わねぇなぁ!!あっー!?テメェ!!一人の女も幸せにした事ねーんだろーな!!このドレッドヘアデブ!!一人の女を幸せにしてから喧嘩に来いよっ!!」


俺は拳(こぶし)を握りしめ、その男に殴りかかった。









しかし…。




数秒後。


俺は青々とした草っ原に、数発でひれ伏した。


俺の前髪をグッと掴みあげたドレッドヘアの男。



「なぁー!お前よー!勢いだけで喧嘩は強くなれねーんだよっ!!!!俺はなぁ〜!愛する女なんていらねーんだよっ!一晩を越す女がいればいーんだよっ!!!なぁ!?覚えとけっっっ!!この世間知らずのクソガキがっっっ!トドメ食らわしてやっからよっ!天国で、まりえだか、まりこだか、そんな風な名前の彼女と仲良くしとけよなぁ!あっ…!ごめんなぁ……名前間違えた……。まりえちゃんだっけかぁ??このっ!バーカ!クタバレッ!!!古臭い名前のレミ、カズサみんなまとめて可愛がってやるよっ!」



ドスッ!ドスッ!



「ん”っぁあっ””””」

いとも簡単にとどめをくらわされた俺。



「こいつら…大した事ねー奴だって!!おまわり来る前に退散だな!さぁて!お前の女も、レミ?カズサだっけ…?ラブホにでも招待しますか……。」

両手の汚(けが)れを落とすように手をはたくドレッドヘア。



ドレッドヘアの足元に、屈していた俺。

(もう!どうにでもなれっ!まりえたちが助かれば…警察に届けば…)



ボコボコの俺はドレッドヘアの足首を余ってる力で思いっきり掴み、こう叫んだ!



「”だ・が・ら!!!俺の女はっ!!まりえって言ってんだろぉっ!!!名前を間違えんなっーーーー!!!!!!!!!!!!!!”」





まりえ、レミ、カズサの安否を心配しながらも、痛みと不安で意識が途絶えそうだった。



動こうとしても、身動きがどうしても取れない。


しかし、ドレッドヘアは、勢いを緩めない。

「なんだお前っ!?お前気持ちわりぃなぁ!?いつまでも言ってろっ!!心配しなくてもよぉ!残りは、あいつ一人だからよっ!」


「おいっ!健三っ!お前逃げろって!」
と、絞りきった声を健三にかける俺。


健三の前に立ちふさがるドレッドヘアの男。
「さっき思いっきりバットで殴ったからねぇー!もぉ立てないでしょー?まずはこいつの息の根、止めてあげようか!」

今にも振り下ろしそうなバットを右手に、狂ったようなドレッドヘアの男。





「コノヤローッ!!!」
バットを振り下ろそうとした瞬間だった。


「ケンゾーーーーーっ!!」

ありったけの声を絞り叫ぶ俺。








「こるぁっぁ!!!好き勝手やってんじゃねーぞっ!!!このヤロウっ!!」



そのイカれたドレッドヘアの男は一瞬にして地面に横たわった。



流血で視界がはっきりしない俺。

右手で目の辺りの流血を拭い、目を凝らして辺りを見渡す。



「ケイタっ!!!!お前大丈夫かよっ!?カズサはもぉ助けだしたからよっ!まりえもレミも、おまわりが逃走経路探って確保したから心配ねぇっ!」

流血を拭った先には……。


康太だ。




「マヂかよぉ!!ほんと泣きそうなぐらい焦ったって!!わりぃ…康太!そのドレッドヘア、これ以上動かねーようにしてくれっ!!そいつキチガイ過ぎるっ!」









ドレッドヘア男の胸にまたがり、胸ぐらを掴む康太。

「オラッッ!!テメェ!!俺の目を見てみろっ!!あの後から、俺がテメェらに何したっ!俺の仲間が何したっ!?これ以上俺の仲間に、指一本でも手を触れたら、テメェのこと殺すからなぁっ!!!!テメェ!!覚えとけっっ!!テメェの仲間も全部片付けたからよっ!あとは塀の中で首でも洗って待ってろっ!!あっっ!?分かったのか!?このクソヤロウ!!俺の仲間を少しでも傷つけてみろ!俺は地獄の果てまで追っかけるからなっ!!」

そう言い終わると康太は、ドレッドヘアの胸ぐらを離して、思いきり地面に叩きつけた。




後方から警察官。



「おいっ!いたぞっ!!大丈夫かぁっっ!!」




俺の近くに横たわっていた健三。
「おせーよぉ…。しっかり住民を守ってくれよなっ!お巡りさんよっ!康太も変な勘違いされねーといーけどなぁ…。あいつ…この前、事が収まったばっかりなのによ……。」


俺も横たわりながら、
「そぉだなぁっ!もぉ痛い思いしたくねーよっ!康太の最後の言動は黙っとくべやっ!あいつやっぱ喧嘩だけは強いわなぁ!酒は弱いくせによ!」
と苦笑いの俺。



健三は、救急隊が到着すると同時に気を失ってしまった。




「カズサ!!お前わっ!何で知らねーバカに着いてくんだよっ!」
と康太。


「違うって!フラワー出て歩っていたら、そのままワゴン車に乗せられたんだって…。私だって女の子だかんねっ…!」


「まぁ〜無事だったからいいけど、ほんっと危なかったんだからよっ!」


「分かってるぅ………。でも……私だって怖かったんだもぉ……。」

大声で泣き出す声と同時に、康太に抱きつくカズサ。

後ろから、無事保護されたレミとまりえが警察車両で到着。


カズサに抱きつくレミ。


俺の胸元に顔を寄せるまりえ。


その後、俺と健三は病院に転送され、4時間ほど眠りに落ちたようだ。